コインランドリービジネスとは、保有している土地や建物、あるいは賃借した物件に、洗濯機や乾燥機などの業務用機材を設置し、洗濯を利用される方々から使用料金を受け取る仕組みです。洗濯機や乾燥機がぐるぐると動きながら収益を上げるイメージがあり、手間が少ない「無人経営」の形態に魅力を感じる方も多いでしょう。
しかしながら、「無人経営」とはいえ、完全に手が離せるわけではありません。定期的に巡回して清掃やメンテナンスを行い、設備が壊れたときの修理対応や、利用者からのトラブル連絡への対処などは必要です。とはいえ、店員を常時配置するタイプのビジネスに比べれば、人件費が抑えやすい点は大きな利点だといえます。
これまでのコインランドリーは銭湯の脇にあり、主に洗濯機を置けない学生や下宿住まいの利用者が中心でした。しかし現代は、乾燥機の導入拡大や大物洗い・共働き世帯などの増加により、幅広い世代が利用するビジネスに成長しています。晴天時と雨天時とで売上が大きく変わる特性はあるものの、雨が続くと乾燥機の利用率が急増する例も見られます。
コインランドリーの商圏は、店舗からおおよそ半径2km程とされています。とくに車でアクセスがしやすく、駐車場の有無が来店数に大きく影響します。たくさんの洗濯物を持ち込む利用者にとって、車移動は便利だからです。マンションやアパートが多く、ファミリー層や単身者が一定数住む地域、さらには買い物ついでに寄れるスーパーの近くなど、生活圏の動線上にあるかどうかも集客面で重要な要素となります。
コインランドリーに導入する業務用洗濯機や乾燥機、内外装工事、水回り・電気工事などを行うには、数千万円単位の初期投資が必要です。特に中古物件を改装する場合も、思った以上に大掛かりな設備工事が必要となり、当初予想より費用が増す場合があります。多くのオーナーがローンを利用して開業しますが、その際の返済計画や収支シミュレーションは具体的に立てなければいけません。
コインランドリーの出店には特別な許可や資格が不要です。そのため、需要が見込めるエリアでは競合店が増えやすい側面があります。また、競合が新しい設備を導入すると、既存店が埋もれてしまうリスクも否めません。コインランドリーは価格や設備面の差別化がしにくいため、立地や清潔感などの付加価値づくりが必要になるでしょう。
コインランドリービジネスには人件費が少なくて済む、景気や流行に左右されにくい、洗濯という生活必需に基づく安定的な需要があるなどの魅力があります。しかし同時に、立地・初期費用・継続的なメンテナンスといった課題も存在します。まずはその基本を押さえたうえで、詳細を理解していくことが大切です。
「コインランドリーは始めれば手間なく儲かるのでは?」と期待されることがあります。しかし、実際には以下のような点があります。
コインランドリーは薄利多売が基本で、多くのお客を呼び込めなければ利益を出しにくいビジネスです。需要の少ない場所や駐車場を確保できないような立地を選んでしまうと、想定した売上に届かず、借入金の返済に苦しむリスクがあります。また、1~2年目は知名度とリピーターが少ないため赤字になるケースも多いです。所有している土地へのこだわりだけで出店場所を決めるのは危険です。
コインランドリーは新しい機材を導入しても、後から同じ設備を導入されるとすぐに追いつかれる恐れがあります。価格を下げれば自分の利益が圧迫され、サービス面での差別化にも限度があるため、他店との差別化が大きな課題です。
スタッフを常駐させなくてもよいメリットはありますが、機械の清掃やトラブル発生時の対応、ゴミの散乱、釣り銭の不具合など、定期的に目を配らないと評判を落とす恐れがあります。ほかにも、設備が故障した場合はすぐ修理しなければ利用者離れの原因になります。
雨が続くと乾燥機目当てに利用者が増え、晴れが長引くと売上が落ちるなど、天候による波が大きい傾向です。
こうしたリスクがある一方で、コインランドリー経営を検討しても良いケースもあります。
周辺人口や住民層、競合状況を判断しつつ、必要な洗濯機や乾燥機の台数、設備の種類などを適切に選べる能力や情報収集力が大切です。大きい設備を多く置けばよいわけではなく、需給バランスの見極めが求められます。
初期投資額は数千万円規模で、開業1~2年は赤字になる可能性が高いため、その間の借入金返済などに耐えられるだけの資金が求められます。
無人運営であっても、清掃やトラブル対応、集金、機械の点検や使いやすさへの工夫など、コツコツ続ける仕事があります。これらを面倒がらず、安心して利用できる店舗づくりに注力できる方に向いています。
コインランドリー経営には、努力を惜しまなければ収益を伸ばすチャンスがあります。一方で、立地判断や資金計画、継続的な運営努力を欠かすと厳しい結果になりやすいことも事実です。
洗濯は生活に不可欠な行為のひとつであり、コインランドリーの需要は現代のライフスタイルに合わせて伸びています。しかしながら、その経営にはリスクと手間が付きまといます。「立地を厳選して選ぶ」「需要に合った機器台数や設備投資をする」「店舗を清潔に保つ」などの努力が求められ、そこにやりがいも見いだせる投資といえます。
最終的には、所有地の特性や自己資金、どれだけ経営に時間や手間を割けるかを総合的に判断することが重要です。もし不動産投資など他の選択肢と迷う場合は、複数の専門家や企業に相談し、様々なプランや試算を比較してから決断するのが望ましいでしょう。
初期 投資額 |
1,200万円~ |
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年間見込 利益額 |
約215万円 |
想定 利回り |
約4~18% |
投資回収 目安 |
5年~ |
初期 投資額 |
2,650〜4,500万円 |
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年間見込 利益額 |
約400万円 |
想定 利回り |
約10~14% |
投資回収 目安 |
6年~ |
初期 投資額 |
5,170万円 |
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年間見込 利益額 |
約375万円 |
想定 利回り |
約8% |
投資回収 目安 |
13年~ |
【選定条件】
2024年4月3日時点、「コインランドリー フランチャイズ」「コインランドリー FC」と検索した際に公式HPが表示されたコインランドリーのフランチャイズ本部25社
を全て調査。 そのうち、全国に店舗があり、物件・土地探しサポートから対応している7社の中から、独自の経営戦略を持つ3社を選定。
・フトン巻きのジロー:小額投資・狭小地出店を叶えるコンパクトなコインランドリー事業を行っていることから、独自の戦略で他と差別化ができるフランチャイズであると判断。
・OKULAB:一級建築士を含めた専属チームを作り店舗デザインに注力していることから、独自の戦略で他と差別化ができるフランチャイズであると判断。
・ジーアイビー:商業施設への出店に特化していることから、独自の戦略で他と差別化ができるフランチャイズであると判断。
※フトン巻きのジローについて:4年後の収支モデル。年間コストには光熱費、賃料、ロイヤリティ、償却資産税、ネット販促費用、その他固定費を含みます。売上や利益はあくまで目安であり、その効果を保証するものではありません。
※OKULABについて:3年目の収支を想定したモデルケース。売上を保証するものではありません。年間コストには光熱費、賃料、運営管理費、売却資産税、販促費用、その他固定費を含みます。FC保証金を除きます。